ワガノワ・バレエ・アカデミーの定番作品として知られているバレエ『人形の精』。
可愛らしい音楽と振付が印象的ですが、プロの舞台での上演回数はあまり多くなくマイナーなイメージのある作品ですので、今回はバレエ『人形の精』について、あらすじ、作品紹介、バリエーション紹介を記事にしました。
こちらの記事がバリエーション選びや作品理解につながりましたら幸いです☆
私Junはバレエを習って18年になる大人リーナです。
高校卒業後ブランクがあり、社会人になってから再会しました。
ジュニア時代もコンクールになど出たことない、趣味のバレエでしたが
だからこそ大人リーナさんに役立つ記事をお届けできるのではと思っています☆
バレエ『人形の精』のあらすじ
第1幕
ある街のおもちゃ屋さんでは、店主と店員、見習いの少年が忙しく働いています。
見習いの少年は失敗やいたずらばかりで怒られています。
そこへ貴族の家族とお金持ちの商人の家族がやってきました。
店主は、中国、日本、道化、オーストリア、スペイン、ハンガリーなど様々な民族の人形を次々に動かしてみせます。
子どもたちは1体ずつ動かされる人形を取り囲み、それぞれ真似しながら楽しく過ごすのでした。
2つの家族がどの人形がいいか決めかねていると、最後に店主はとても貴重で美しい人形の精を出して見せます。
お客達がその人形の精を注文して帰ると、店主と店員たちもすぐに帰ってしまいます。
そんな中、見習いの少年が1人お店に取り残されてしまいます。
夜も更け、少年は疲れて眠り込んでしまいました。
第2幕
真夜中を過ぎると、なんとおもちゃたちが動きだし、目を覚ました少年は驚きます。
人形の精の合図で人形たちも全員目を覚まし、動き出しました。
まず最初に人形の精が踊りを披露すると、それぞれの人形たちも順番に踊り出し、少年は夢のような時間を過ごします。
最後に人形の精と2人の道化がすばらしい踊りを披露すると、夜が明ける時間になりました。
人形たちはそれぞれの場所に戻り眠りの準備に入ります。
そこへおもちゃ屋の店主と店員が入ってきて、見習いの少年はあわてて隠れますがすぐに見つかって怒られそうになりました。
すると人形たちがまた踊り出し、大人達を驚かせるのでした。
人形たちは少年の味方で、とてもハッピーなお話です✨
バレエ『人形の精』の作品紹介
バレエ『人形の精』は、1888 年 10 月 4 日、ウィーンにて振付家ハスライターと作曲家ヨゼフ・バイエルによって初演されました。
1903 年のロシアでも、サンクトペテルブルク帝室劇場のダンサーであったレガート兄弟、セルゲイとニコライが上演し、兄弟にとって『人形の精』は振付家としてのデビュー作になりました。
彼ら初演をそのまま上演したのではなく、チャイコフスキーやドリゴ、 ルビンシュテインの曲を挿入し、独自に振付を行っています。
1989 年にコンスタンチン・セルゲイエフが行った演出を、2013年にニコライ・ツィスカリーゼが見直し改訂しました。
ツィスカリーゼは古い資料を紐解き、昔を知る人々に取材し、レガット兄弟の振付に近づけ、現代に合わない踊りを整理、自らの振付を加えており、2019年に来日公演を行いました。
音楽
序曲
<第1幕>
情景(おもちゃ屋の朝)
間奏~気まぐれ人形の踊り~チロル人形の踊り
間奏~赤ちゃん人形の踊り
間奏~道化とハーレキン
人形の精の登場~情景(おもちゃ屋の夜)
間奏曲
<第2幕>
人形たちの情景
グランド・ワルツ
人形と兵隊(ミニアチュア・マーチ)[音楽:ピョートル・チャイコフスキー]
ロシア人形の踊り[音楽:チェーザレ・プーニ]
中国人形の踊り
フランス人形の踊り[音楽:リッカルド・ドリゴ]
スペイン人形の踊り
日本人形の踊り
~パ・ド・トロワ~
アダージオ[音楽:リッカルド・ドリゴ]
ピエロのヴァリエーション
人形の精のヴァリエーション
コーダ
フィナーレ(マーチ)
バイエルの組曲をベースに、チャイコフスキーやドリゴ、 ルビンシュテインの曲を挿入した構成になっています。
コンクールなどでよく踊られる有名な踊りは、人形の精のヴァリエーションですね。
作曲家について
ヨーゼフ・バイエル
1852年に生まれたオーストリア=ハンガリー帝国末期の作曲家・指揮者で、1885年から没年までオーストリア宮廷バレエ団の指揮者を務め、音楽界で名をあげるようになりました。
『人形の精』はウィーン宮廷歌劇場のために作曲されたバレエ音楽で、バイヤーの最も有名な作品となりました。
また、同年代を生きた作曲家ヨハン・シュトラウス2世のバレエ音楽『シンデレラ』を補筆しています。
ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督のマーラーは人気絶頂を誇っていた“ワルツ王”ヨハン・シュトラウス2世にバレエ音楽の作曲を委嘱しますが、作品が未完のまま亡くなってしまいます。
そこでヨーゼフ・バイヤーが作品を補筆しましたが、マーラーは完成された作品を「これはシュトラウスのものではない」と断言し、ウィーンでの上演を拒否・・・
そのため初演は1901年にベルリン王立歌劇場で行われています。
壮絶な紆余曲折がある作品ですね汗
衣装、舞台芸術について
レオン・バクスト
1903年ロシアでの上演の際、バレエ『人形の精』の衣装、舞台芸術を担当したのはレオン・バクストで、ロシア帝国の画家、舞台美術家、衣裳デザイナーです。
セルゲイ・ディアギレフが主宰したバレエ・リュスで、『火の鳥』、『牧神の午後』、『ダフニスとクロエ』ほかの舞台美術を担当しました。
バクストの舞台装置は、舞踊団の世界的な評判を支える重要な柱でもありました。
バレエ『人形の精』のバリエーション
バレエ『人形の精』の全幕の映像はこちらです↓
Vaganova Ballet Academy The Fairy Doll
コンクールなどでよく踊られる有名な踊りは「人形の精のヴァリエーション」です。
最も美しい人形である、人形の精とふたりの道化の人形が踊るパ・ド・トロワ中のヴァリエーションです。
人形の精の踊りにはきわめて難しいパ が含まれていますが、やはりここでもア ーティスティックな側面、腕と胴体の美しいポーズどりが大事です。テクニック だけでは踊りこなせません。
ニコライ・フョードロフ (元ボリショイ・バレエ プリンシパル、 バレエ・プロデューサー)
派手な回転やジャンプは少ないものの、ポーズの時間が長くキープ力が問われるヴァリエーションだと思います。
とにかくお腹の引き上げが命の、大人リーナにはなんとも厳しい作品です(汗)
こちらは小学生さんのコンクール映像で、バレエシューズで踊っています。
大人リーナの方が発表会で踊る際、振付の参考になるかもしれません!
発表会で踊る際は、女性ヴァリエーションのみを一人で踊ることがほとんどだと思います。
しかし、本来の作品では「人形の精のヴァリエーション」はパ・ド・トロワの一部で道化人形二人が隣にいる踊りだということを忘れず、道化人形とコミュニケーションを取るように踊りたいものです。
また、「人形の精」は人形たちの中で最も美しい貴重な人形であり、お姫様的な雰囲気が必要かなと思います!
以上がバレエ『人形の精』の作品紹介でした☆
こちらの記事がバリエーション選びや作品理解につながりましたら幸いです。
なお、ワガノア・バレエ・アカデミーのヴァリエーションレッスンがDVD化されています!
モデルは現在マリインスキーバレエ団のマリア・ホーレワさんです☆
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